コンフォート原則。

蔡 俊行
2026.02.11

コンフォート原則ってワード、知ってます?

近年、SNSやインターネット上の節約・ライフハック術で広まった考え方のひとつで、使用時間が長いもの、あるいは使用頻度が高いものにお金をかけることで生活の質(QOL)を最大化するという、投資・消費の優先順位に関する考え方だ。毎日長時間使用する椅子やマットレス、下着、靴などの日用品にお金をかけることで疲労軽減や精神的な満足度を高める一方、年に数回しか使わない旅行バッグや家電などへの高額な投資は控えようというもの。

このアイデアがどうやら多くの人たちに刺さったようで、教科書に載せるべきだなど、絶賛の嵐らしい。

確かに合理的なやり方だ。コスパ・タイパを気にする若い人たちに響くのもよくわかる。

先日、知人とスキーの話になった。彼は後期のバブル世代で、当時は雪山にもよく行っていたようだ。「昔は最新型の板を持つのがステータスでした」。

1980〜90年代的概念である。最新のもの、高価なもの、珍しいもの、他人から羨まれるものを持ったり、使ったり、買えたりすることが、当時の若者が欲することだった。

40年近く経つと、価値観も当然だが大きく変わる。

マイカーにスキーを積んで、渋滞の関越道をユーミンを聴きながら走っていた、いまのバブルおじさん世代は、このコンフォート原則についてどういう思いなのだろうか。

先日、安比高原にスキーに行った。昔の仲間のメッケ隊(90年代に雑誌『ポパイ』で同名の連載をしていたスタイリスト3人組)と、そのアシスタントだった者たちと。

道具はそれぞれレンタルだ。特に安比には「エグゼクティブラウンジ」というアメアスポーツが運営しているレンタルエリアがあり、ラグジュアリーな空間で最新のサロモンやアトミック、アルマダのウェアやギアを、ゆったりとレンタルできる。年に数回しかスキーをしないのであれば、場所も取らないし、こっちのほうが断然得だし楽だ。

これもひとつのコンフォート消費概念にあてはまる。

シェアカー、レンタルスーツケース、いまではサブスクのカジュアルウェアレンタルも好況だ。気がつくと、いろんな消費・サービスがこのコンフォート消費の上に成り立ってきている。

アウトドア界のエルメスと言われるアークテリクスのスキーウェア上下を買って張り切っていた自分は、相変わらずオールドスクールおじさんであった。

昨年ハワイに行ってサーフボードをレンタルしようとしたら、現地の友人から「ここだけの話、コストコに行ってサーフボードを買って、遊んで帰るときに返品すればいい。コストコは傷があろうが何だろうが、無条件でどんな製品でも返品に応じるから」。

究極のコンフォート消費ライフハックだったが、さすがにそれはできないと、MOKUサーフで普通にレンタルした。

良い子はマネしないでね。

蔡 俊行/
株式会社ライノ 代表取締役
編集者。プランナー、コピーライターとして数多の企業のブランディング、広告制作なども手掛ける。また自社媒体フイナムの統括編集長。面白いことをいつも考えていて、飲食店を開業してみたりサウナ事業に手を出してみたりとでたらめなことをやってます。
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