年末歌合戦

蔡 俊行
2026.01.09

ヒトには生命維持のための「三大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)」というものがある。他にもマズローやマレー、ライアンとデシなどがヒトの欲求について提唱しているが、自分的に一番強いのが睡眠欲だ。他の欲求より力強く働いているように感じる。

日頃の寝つきはいいほうである。またどこでも寝られる。バスや電車、タクシーの移動中でも、あるいは試写会の最中でも常に睡魔と戦っている。しかも寝たらぐっすりサウンドリーに寝られる。これはある種の特技と言っていいと妻はいう。

年の瀬だ。

この時期になると時候の挨拶として「年末年始はどう過ごされますか」なんて聞かれることが多い。すでに実家はないし、お正月に出かける習慣があまりなかったので、例年のように自宅で過ごすなんて面白みのない答えになってしまう。

毎年恒例、冬至の穴八幡。今年も融通様をいただきに赴いた。

一陽来復。なにか希望があるね。

子供の頃は、暮れのレコード大賞や紅白歌合戦などを楽しみにしていた。なんだかキラキラした高揚感のようなものに胸を躍らせていた。しかし大人になるともうテレビは見なくなった。レコード大賞がなんだか特別なものでなくなったように感じたあたりから、大晦日にテレビをつける習慣はなくなった。もう何年も一足お先なお屠蘇気分で22時ごろには気絶するように寝ている。格闘技にも関心が薄いし、お笑いも苦手だ。

しかし近年、紅白歌合戦や裏のチャンネルでやっている懐メロ番組のような歌番組を家人の付き合いでちらちら観ている。多くの人と同じように紅白で聴く曲のほとんどは知らないし、聞いたこともない。特にアーティスト枠で出場される方たちは、その名前やユニット名すら初耳であったりする。これでは楽しめない。つい寝たくもなる。

他方、その懐メロ番組は知ってる曲、歌手ばかりだが、あまりにも昭和すぎてしっくり来ない。なにかちょうどいい塩梅のものがないのだ。


先日、Spotifyで勧められたプレイリストに「ザ・ベストテン☆昭和の歌謡曲」というのがあった。同じ「昭和」でも聞いてみるとこれがなかなか楽しい。ほとんど知ってる歌ばかり。あの頃は、誰もが知っているヒット曲というのがあったなあなんて遠い目をしながら聞いていると、隣の妻もどれも聞いたことがあるという。

シティポップというジャンルも昭和歌謡のひとつであるが、もはや世界でも人気が定着した感がある。これは70〜80年代のAORなどに影響された広義の歌謡曲。ニューミュージックというジャンルにも含まれる都会派のスタイルの楽曲だ。大瀧詠一、山下達郎、南佳孝などが主なアーティスト。これが海外のZ世代に人気だというから面白い。音楽配信サービスは時代も国境も簡単に超越し、新しいリスナーを再生産しているのだ。

それはともかく。いまテレビを点けているのは、ほぼ高齢者ということになっている。ただ後期高齢者(75歳以上)のくくりに団塊世代が突入したのが今年、2025年だ。この世代からぼくらの世代(1960年代生まれ)、そして続く団塊ジュニア世代らにとって、こうしたニューミュージックはいつも時代と共にあった。なんならそんな歌番組を年末にやってくれないかな。本人が出るもよし、当時の映像を使うもよし。もしかすると海の向こうの若い世代も関心を示すかもしれない。

お隣、韓国の音楽界のようにグローバルマーケティングをせずとも、日本には価値のある資源が綿々と続いていることを思い出した方がいい。


ここだけの話、うちの妻も若い頃、歌手活動をしていた時期がある。時流を捉えて歌を歌うのもいいねなんてけしかけています。

蔡 俊行/
株式会社ライノ 代表取締役
編集者。プランナー、コピーライターとして数多の企業のブランディング、広告制作なども手掛ける。また自社媒体フイナムの統括編集長。面白いことをいつも考えていて、飲食店を開業してみたりサウナ事業に手を出してみたりとでたらめなことをやってます。
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