お世話になります、ナマハゲです

蔡 俊行
2025.05.30

フランス人写真家、シャルル・フレジェの「WILDER MANN」という写真集がある。ヨーロッパ諸国で古くから伝わる習わし、儀式、祭礼のためのコスチュームをシリーズで撮影した写真集だ。動物の毛皮、骨、あるいは植物などで装束された人たちの姿は、時に怖くもあるがユーモラスでもある。およそ10年くらい前に話題になった。

擬人化、擬獣化、あるいは悪魔などその表現はさまざまだが、どこかで見たようなものもある。そう日本の奇祭での仮面神、来訪神、あるいは鬼たちの姿と似通っているのだ。秋田県のナマハゲがその代表ともいえる。

ナマハゲといえば、以前、X上にこんなポストが流れてきた。

「過疎に苦しむ秋田県に帰ってきた。テレビをつけたらナマハゲが包丁かかげて『泣く子はいねぇが!…子供が…いねぇな。…秋田では少子化が止まりません』みたいなCMがやってて俺が泣きそうになってる」。

先日驚く話を聞いた。どうやら現代のナマハゲはアポイント制らしい。あるいは家に入る前に玄関先から「ナマハゲです。入ってもいいですか」と許可を取らないといけないのだそうだ。なんせコンプライアンスが激しさを増すこの世の中、民族伝承だろうが風習だろうが、そんなものは一蹴である。

どうやら80年ごろからセクハラ問題が取り沙汰され、新婦のお尻をつねるなどの行為が社会的に許されなくなってきたという。このころといったら「楽しくなければテレビじゃない」というどこかのテレビ局が最盛期を迎える時代。秋田県は一歩先を行ってたのだね。

コンプライアンスはハラスメントのメタ概念、密接に関連する。つまりパワハラなどはコンプラ違反だ。

仕事を頼んだ相手先の失態で迷惑を被ったが、その謝罪を要求するのにも下請法やらパワハラなどを考えねばならないご時世である。土下座などはもってのほか、罰として請求額を減額させるというのはクロということになるらしい。

ここだけの話であるが、そんな騒動の最中にある。

謝るときはきちんと非を認め、再発防止のための仕組みづくりをしたいし、してほしい。

昔どこかのプレスの女性が、失礼かましたスタイリスト助手に対し、「裏から手を回して、あいつ絶対潰す」とナマハゲのような顔になって放言したという話を聞いたことがある。こういうのはアウトですからね。

蔡 俊行/
株式会社ライノ 代表取締役
編集者。プランナー、コピーライターとして数多の企業のブランディング、広告制作なども手掛ける。また自社媒体フイナムの統括編集長。面白いことをいつも考えていて、飲食店を開業してみたりサウナ事業に手を出してみたりとでたらめなことをやってます。
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