情熱は必ず伝わる。

山﨑大貴
2025.05.21

制作部の山﨑です。『1974年のサマークリスマス 林美雄とパックインミュージックの時代』という本をご存知でしょうか。先日、とある企画の打ち合わせの際に、先輩のスタイリストさんに勧められて読んだ一冊です。伝説的な深夜ラジオ番組『パックインミュージック』を担当していた、TBSアナウンサー・林美雄さんの半生を描いた作品なのですが、編集者である自分にも通じる大切なことを教えてくれました。

林さんは、テレビや雑誌ではなかなか取り上げられない新しい才能を、当時はメジャーとは言えなかった深夜ラジオというメディアを通じて紹介し続けました。その結果、深夜ラジオを愛聴していたサブカルチャー好きの若者たちの心を鷲掴みにしたのです。ここだけの話、デビュー前の荒井由実(現・松任谷由実)を紹介し続けていたというエピソードは、彼の慧眼を象徴するもの。まるでブレイク前のブランドを見出すファッションエディターのような存在です。

これは、自分の愛読書である新井英樹さんのマンガ『宮本から君へ』の有名なセリフ 「俺がカッコいいと思ってるものをそうじゃないっていう人間に認めさせたいんです」にも通じるものがあると感じました。ファッションの世界も同じで、最初は理解されなくても、自分の審美眼を信じ続けることの価値を、この本は改めて教えてくれました。最近、Z世代の消費者はブランドの「信念」に共感して購入を決めるという調査結果がありました。マーケティングの観点から見ても、林さんのように自らの信念を貫くことが、強いブランディングに繋がるのだと思います。

林さんが教えてくれたのは、「良いと思ったことを思う熱量は、必ず伝わる」という真理。文化の伝道師であった林さんの姿勢こそ、私たち編集者が見習うべきものではないでしょうか。 と、生意気ながら、そんなことを思った次第です。

山﨑大貴/
制作部
美容師、古着屋、某出版社のモノ系雑誌を経て、2019年にライノへ入社。制作部の一員として、クライアントワークを中心にコンテンツ制作に従事しています。ファッションはもちろん、音楽、映画、アートなど、カルチャー全般に興味があります。休日はもっぱら中古レコード屋や古本屋を巡り、その後は居酒屋で現を抜かしています