現場主義。

鈴木悠介
2025.05.14

あっという間に4月も終わり。東京は桜が散り、新生活を迎えたひとたちは少しづつ慣れてきたかもしれません。そんな4月の中で楽しみのひとつが本屋大賞。キャッチコピーは“全国書店員が選んだいちばん!売りたい本”でシンプル・イズ・ベスト。これまでに選ばれた作品の数多くがベストセラーやアニメ・映画化され、2025年は22回目を迎えました。

世界中にはさまざまな文学賞があります。その多くは作家や文学者が選考委員だったり、大手出版社が主催するもの。本屋大賞は文字通り本屋=書店員の声を届けるために設立され、新刊を扱う書店員主体の投票によってノミネート作品および受賞作が決定。隣にいるひとから知るような、読者にとても近い距離感の文学賞な気がします。出版不況を打開するため、現場からの声で本屋大賞が生まれたエピソードは、世の中のさまざまな問題に当てはめ考えることもできるはず。

出版不況が叫ばれて20年以上。本屋の数は2003年の20,880件から、2023年には10,918件に。本屋へ足を運ぶことからネット注文で自宅へ配送、そしてデジタルで定額読み放題の時代へ。Amazonのおすすめだって悪くありません。便利で出会いのきっかけのひとつだけど、それだけじゃ味気ないと思うのは懐古主義でしょうか? 

本屋大賞の影響力は、今では歴史ある直木賞や芥川賞より売り上げ部数で言えば上に。仕組みより、まず姿勢。ライノでの編集という仕事も、足を運んで得た情報と情熱が宿る記事に勝るものはないかもしれません。いつの時代も現場へ行かないと、他のメディアに載っていないここだけの話なんて聞けないですから。

鈴木悠介/
フイナム編集部
1984年生まれ、2021年ライノ入社。制作部を経て現在はウェブマガジン『フイナム』での編集と、2024年にスタートした『コミューン H』の運営を担当。
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