文脈の魔法。
先日、YouTubeで公開された短編映画『ラストシーン』はご覧になりましたか?

出典:AOI Pro.
名だたる俳優・クリエイター陣に、たった30分弱とは思えない物語体験。特筆すべきポイントは多々あるなか、なんと言っても大きなトピックは、全編「iPhoneで撮影」されていることではないでしょうか。
再生数は、公開から2週間足らず(このレターの執筆時点)で約3,366万回。この凄まじい勢いには、作品そのもののパワーはさることながら、「iPhoneで撮影」というシンプルかつキャッチーな話題性も多分に影響しているはずです。(実際に作品を観てみると「iPhoneっぽさ」はむしろ感じられず、あえて言うならば“普通”の映像に仕上がっています。)
たったひとこと添えるだけで、グッと興味をそそられるものに。そんな魔法のような仕掛けは、世の中を見渡すと意外にもたくさん溢れています。

出典:GEO
こちらは、レンタルDVDなどを取り扱うゲオが販売するスウェットセットアップ。価格は1,000円前後。一見何の変哲もないどころか、ゲオの担当者いわく「生地はペラペラで、隙間から風がビュービュー入ってくる」とのこと…。
そんな“普通”のスウェットにも、ちょっとしたアイデアの力が。ゲオがこのスウェットに与えたのは、「ルームウェア専用」というコンセプト。レンタルDVDショップという業態の特性を絡めて、あえて利用シーンを限定的にしたんだそう。すると、「映画を観るときにちょうどいいかも?」「家でゴロゴロするのによさそう」と、レンタル利用客による“ついで買い”が続出。結果、過去には週に1万着ペースで売れた実績もあるとか。
ほかにも、老舗米菓メーカーの商品を「Netflixに合うあられ」としてリブランディングしたり、ごく普通の小松菜にヘヴィメタルを聴かせて育て「メタル小松菜」と称したり…。業界を問わず、探せばまだまだありそうです。
プロダクトそのものに手を加えずとも、文脈を与えてあげることで輝きを増す。そんな「魔法」をかける余地が、あなたの身の回りにも隠れているかも。ここだけの話、いま読んでいるこの文章も実は「AIで生成」していたり…なんてことはありません。

制作部