ちなみにわたしは吉野家派。
ゴールデンウィークに、佐藤多佳子さんの『夏から夏へ』というノンフィクションを読みました。

どういう内容かというと、日本代表のリレーチームを追いかけた一冊で、彼らが過ごした、2007年の夏の世界陸上大阪大会から……という本の概要は、私がキーボードを叩かなくてもchat GPTに聞けばOK。割愛します。

ここから私のターン。読み終わったあとも不意に思い出してしまう場面があります。それは日本新記録を出した伝説的な試合の後、チームのメンバー4人でなか卯に行った話。速さに命を懸けた男たちが、数百円の牛丼を「ご褒美だ」と無邪気に食べる描写はなんとも “普通” で、人間らしい。
なにより本を推敲する過程でこの場面を削らなかったことに感心しました。だって本を木に例えるなら、試合前後の彼らの感情の揺れや練習の日々は幹で、なか卯エピソードはほんの枝葉に過ぎないから。そしてそんな話まで引き出した著者の取材力には、編集者として敵わないと思わされたのです。
ここでchat GPTを呼び戻して、試しに「彼らが試合後に食べたもの」を知ってるか聞いてみたらこんな回答が。まあ、知らないか。

あるひとが、AIに生成できないことは、時間、土地、過程、癒着、思い出、と言っていました。そこにわたしは些事(=小さな事、つまらない事)も追加したい。些細で奥行きのあることは人間にしかおもしろがれないから。なか卯もそう。
そしてここだけの話、わたしが働いているフイナムは、どんなメディアよりもそういうことをおもしろがるメディアだと自負しています。脇道に逸れたインタビューをちょっと放置したり、必要ないけどなんか良い風景カットを入れてみたり、だれもまだ注目していないものを深掘りしてみたり。たまに三振することもあるけど、ホームランもある。それがぜんぶフイナム。
だから、AIに理解できない仕事はぜひともフイナムへ。マニアックなこともちょっと変なことも、もちろんかっこいいことも。割となんでも、うまいことやってのけます。
セールス文で締めたところで筆を置きます。ちなみに、chat GPTに恋愛相談をすると、意外と芯をついてくるのでおすすめです。

フイナム編集部